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R18 BL小説『 ESCAPE』(205)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第6章「希望」
205ページ
更新しました。
*****
僕の質問に、その人は頷いて、「最初は少し戸惑ったことも事実だけどね。」と言って僕の頭に軽く手を置いた。
「僕達は親子だけど、君が生まれたことを、僕は知らなかった。君も鈴宮さんが実の父親だと思って育った。
急に本当の父親だと言われても、実感が沸かないのは分かるよ。僕も最初はそうだった。」
話を訊きながらも、僕が頭に置かれたその手を、やんわりと払い退けると、その人は小さく「ごめん。」と言って微笑んだ。
「だけどね。君に初めて会ったあの日、沙織にそっくりな君を見て、
ああ、本当に僕達が愛し合ってそれで生まれた命なんだと、ここが凄く暖かくなったんだ。」
と言って、その人は胸に掌を当てた。
「僕はね、沙織に出逢うまで人を本当に愛するというのがどういう事なのか、分かっていなかったと思う。」
「本当に人を愛すること?」
その言葉を僕が繰り返すと、その人は「そう。」と言って、遠くの景色に視線を移して、懐かしそうに目を細めた。
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第6章「希望」
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僕の質問に、その人は頷いて、「最初は少し戸惑ったことも事実だけどね。」と言って僕の頭に軽く手を置いた。
「僕達は親子だけど、君が生まれたことを、僕は知らなかった。君も鈴宮さんが実の父親だと思って育った。
急に本当の父親だと言われても、実感が沸かないのは分かるよ。僕も最初はそうだった。」
話を訊きながらも、僕が頭に置かれたその手を、やんわりと払い退けると、その人は小さく「ごめん。」と言って微笑んだ。
「だけどね。君に初めて会ったあの日、沙織にそっくりな君を見て、
ああ、本当に僕達が愛し合ってそれで生まれた命なんだと、ここが凄く暖かくなったんだ。」
と言って、その人は胸に掌を当てた。
「僕はね、沙織に出逢うまで人を本当に愛するというのがどういう事なのか、分かっていなかったと思う。」
「本当に人を愛すること?」
その言葉を僕が繰り返すと、その人は「そう。」と言って、遠くの景色に視線を移して、懐かしそうに目を細めた。
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R18 BL小説『 ESCAPE』(204)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第6章「希望」
204ページ
更新しました。
*****
「元気にしていた?」
あの愛おしむような視線が注がれているのを感じて、僕は目が合わないように前方に広がる景色を眺めていた。
「背は伸びたけど、少し…痩せたみたいだね。」
それでも返事をしない僕に、その人は優しいトーンの声で、話しかけてくる。
「今日は、学校は休みなのかな。」
「……。」
今度は、クスッと小さく笑う声が零れて、「ま、いっか。」と続く。
「学校に行ってると思っていたから、今日、君に会えるなんて、この偶然は僕にとってはラッキーだったしね。」
「……じゃあ、何しに来たんですか。」
目は合わさないけど、僕が喋ったのが、そんなに嬉しかったのか、弾んだ声が返ってきた。
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「元気にしていた?」
あの愛おしむような視線が注がれているのを感じて、僕は目が合わないように前方に広がる景色を眺めていた。
「背は伸びたけど、少し…痩せたみたいだね。」
それでも返事をしない僕に、その人は優しいトーンの声で、話しかけてくる。
「今日は、学校は休みなのかな。」
「……。」
今度は、クスッと小さく笑う声が零れて、「ま、いっか。」と続く。
「学校に行ってると思っていたから、今日、君に会えるなんて、この偶然は僕にとってはラッキーだったしね。」
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R18 BL小説『 ESCAPE』(203)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第6章「希望」
203ページ
更新しました。
*****
--誰……?
思い出せそうで、思い出せない。
得体の知れない不安が押し寄せてきて、思わず立ち上がり、後退るように階段を一段上った。
「ああ、やっぱり伊織くんだね。前に会った時よりも背が伸びて、少し大人っぽくなったかな。」
その人は、困惑している僕に、構わずまた一歩近付いてくる。
--あの時?あの時っていつ…?
「こんな所で会えるなんて嬉しいよ。前に会った時も、ちょうど今頃の…そうだ、夏休みに入る前日だ。確か君は中学一年だったね。」
--中学一年の……
「……あ……、」
あの夏祭りの日…学校から帰ってきたら、家にいた人。
思えば、あの、悪夢のような日の、始まりだった。
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--誰……?
思い出せそうで、思い出せない。
得体の知れない不安が押し寄せてきて、思わず立ち上がり、後退るように階段を一段上った。
「ああ、やっぱり伊織くんだね。前に会った時よりも背が伸びて、少し大人っぽくなったかな。」
その人は、困惑している僕に、構わずまた一歩近付いてくる。
--あの時?あの時っていつ…?
「こんな所で会えるなんて嬉しいよ。前に会った時も、ちょうど今頃の…そうだ、夏休みに入る前日だ。確か君は中学一年だったね。」
--中学一年の……
「……あ……、」
あの夏祭りの日…学校から帰ってきたら、家にいた人。
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R18 BL小説『 ESCAPE』(202)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第6章「希望」
202ページ
更新しました。
*****
強い陽射しが容赦なく、シャツの半袖から出ている腕をジリジリと灼く。
手をかざして見上げると、雲ひとつない真っ青な空がどこまでも広がっていた。
もう、梅雨は明けたんだろうか。
今日は、いったい何日だろう。
父さんに約束した通りに、僕はあれから外に出ることもなく、ずっと家の中で過ごしていた。
太陽の下に出るのは久しぶりだから、元々日に灼けにくい白い肌が、余計に青白く貧相に見える。
だけど、ずっと父さんが傍に居てくれるから…。
今朝のことを思い出しながら、今がとても-
---幸せだと呟いた。
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強い陽射しが容赦なく、シャツの半袖から出ている腕をジリジリと灼く。
手をかざして見上げると、雲ひとつない真っ青な空がどこまでも広がっていた。
もう、梅雨は明けたんだろうか。
今日は、いったい何日だろう。
父さんに約束した通りに、僕はあれから外に出ることもなく、ずっと家の中で過ごしていた。
太陽の下に出るのは久しぶりだから、元々日に灼けにくい白い肌が、余計に青白く貧相に見える。
だけど、ずっと父さんが傍に居てくれるから…。
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R18 BL小説『 ESCAPE』(201)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第6章「希望」
201ページ
更新しました。
*****
「そこで、か。」
僕の視線に気付いて、父さんは僕の身体を抱いたまま振り返り、ベッドへ歩み寄った。
ベッドに降ろされて、上から全身へと注がれる視線に、肌が灼ける。
ーー怖い。
父さんは、嫉妬している?
慎矢に?
今まで僕が、父さんに逢えない寂しさを紛らせる為に、遊びで誰かに抱かれても、
咎められることはあったけど、こんなに凍てつくような眼差しで見られることはなかった。
中学1年の夏祭りの夜、神社で僕を陵辱した、名前も思い出せないあの男と、ほんの一カ月の間過ごした時も、
僕を見つめる父さんの瞳の奥に、燻る嫉妬の焔を見たけれど。
これは、あの時と違う。あの時よりももっと…。
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第6章「希望」
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「そこで、か。」
僕の視線に気付いて、父さんは僕の身体を抱いたまま振り返り、ベッドへ歩み寄った。
ベッドに降ろされて、上から全身へと注がれる視線に、肌が灼ける。
ーー怖い。
父さんは、嫉妬している?
慎矢に?
今まで僕が、父さんに逢えない寂しさを紛らせる為に、遊びで誰かに抱かれても、
咎められることはあったけど、こんなに凍てつくような眼差しで見られることはなかった。
中学1年の夏祭りの夜、神社で僕を陵辱した、名前も思い出せないあの男と、ほんの一カ月の間過ごした時も、
僕を見つめる父さんの瞳の奥に、燻る嫉妬の焔を見たけれど。
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