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R18 BL小説『 ESCAPE』(194)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第5章「陽炎」
194ページ
更新しました。
*****
その瞬間、周りの景色が全部消えていく。
家の壁も、廊下も、玄関も、
慎矢も……。
全部、真っ白に塗られていく。
この空間には、僕とその人の二人だけしかいない。
逢いたくて、抱き締められたくて、ずっと待っていたその人しか、もう見えなくてなっていて…
「ーー父さん!」
僕は吸い寄せられるように、駆け出して、裸足のまま玄関のたたきに下りて、父さんの胸に飛び込んでいた。
外から帰ったばかりの父さんの腕の中は、少し汗の匂いがする。
3カ月ぶりの父さんの温もりと、匂いだ……。
背中に回された手が、しっかりと僕を抱き締めてくれて、僕もしっかりと父さんの首に縋り付いていた。
「おかえりなさい、父さん、とうさん、…逢いたかった……逢いたかった……」
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R18 BL小説『 ESCAPE』(193)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第5章「陽炎」
193ページ
更新しました。
*****
引き戸を開けた瞬間は目が合って、僕の名前を、小さい声で呼んだくせに、
その視線は、すぐに僅かに逸らされてしまう。
彼が制服じゃなくて、私服を着ている姿に、ずっと家の中に閉じ篭っている僕は、
ああ、今日は土曜日だったんだと思い出した。
「……慎矢…。」
元気だった?
体育祭はどうだった?
今日は部活は休みなの?
僕にはもう関係のない、どうでもいい言葉ばかりが浮かんでくる。
「…何しに来たの。」
聞かなくても分かりきっていることしか、声に載せることができなくて、
僕も慎矢から、目線を外して宙を見つめた。
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第5章「陽炎」
193ページ
更新しました。
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引き戸を開けた瞬間は目が合って、僕の名前を、小さい声で呼んだくせに、
その視線は、すぐに僅かに逸らされてしまう。
彼が制服じゃなくて、私服を着ている姿に、ずっと家の中に閉じ篭っている僕は、
ああ、今日は土曜日だったんだと思い出した。
「……慎矢…。」
元気だった?
体育祭はどうだった?
今日は部活は休みなの?
僕にはもう関係のない、どうでもいい言葉ばかりが浮かんでくる。
「…何しに来たの。」
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僕も慎矢から、目線を外して宙を見つめた。
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R18 BL小説『 ESCAPE』(192)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第5章「陽炎」
192ページ
更新しました。
*****
鬱陶しい雨の季節も、もうすぐ終わる。
1階の庭に面した廊下の窓を開け放つと、時折爽やかな風が家の中を通り抜けていく。
ーー今日は空が高い。
僕が小学校に入学した記念に植えた庭の桜の木の、濃い緑の枝葉が、青い空に映えている。
すっかり成長して逞しくて、眩しい姿で、僕を見下ろしている。
廊下を歩いて、一番東奥の書斎の前で足を止めて、ドアノブに触れてみる。
鍵の掛かっているドアを、開ける事は出来ないのだけれど。
その隣の寝室の、中から書斎に続くドアも鍵が掛けられていた。
父さんは留守にする時、書斎に鍵を掛けるのは、いつもの事なんだけれど。
カーテンを閉め切った、薄暗い寝室で、ひとつ溜息を零して、父さんのベッドに横になった。
もう、すっかり父さんの匂いもしないシーツ。
だけど、部屋の中には、なんとなくまだ、父さんの匂いが残っている。
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お返事させていただきましたので、
心当たりの方は、
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第5章「陽炎」
192ページ
更新しました。
*****
鬱陶しい雨の季節も、もうすぐ終わる。
1階の庭に面した廊下の窓を開け放つと、時折爽やかな風が家の中を通り抜けていく。
ーー今日は空が高い。
僕が小学校に入学した記念に植えた庭の桜の木の、濃い緑の枝葉が、青い空に映えている。
すっかり成長して逞しくて、眩しい姿で、僕を見下ろしている。
廊下を歩いて、一番東奥の書斎の前で足を止めて、ドアノブに触れてみる。
鍵の掛かっているドアを、開ける事は出来ないのだけれど。
その隣の寝室の、中から書斎に続くドアも鍵が掛けられていた。
父さんは留守にする時、書斎に鍵を掛けるのは、いつもの事なんだけれど。
カーテンを閉め切った、薄暗い寝室で、ひとつ溜息を零して、父さんのベッドに横になった。
もう、すっかり父さんの匂いもしないシーツ。
だけど、部屋の中には、なんとなくまだ、父さんの匂いが残っている。
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R18 BL小説『 ESCAPE』(191)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第5章「陽炎」
191ページ
更新しました。
*****
中は、たぶん着替えが数枚入ってるだけだと思うけど。
ーーどうしよう。
慎矢、取りに来るかな…なんて考えてしまってる事に苦笑した。
来るわけない。
きっともう、僕の顔なんて見たくないに決まってる。
でも、慎矢の家に宅急便で送るにも、住所を知らない。
結局、処分する気にもなれなくて、
慎矢の荷物は、そのまま僕の部屋の隅に置いたままになっていた。
今までなら、そこに置いてあることも忘れていたのに、
学校に行かなくなって、1日の大半を部屋で過ごすことになったから、
気にせずにいようと思っていても、自然に視界の片隅に見えてしまう。
そして、その度に、なんだか胸の奥がツクンと痛む。
なら、見えない所に片付けてしまえばいいのに、そうしなかったのは…、
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第5章「陽炎」
191ページ
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中は、たぶん着替えが数枚入ってるだけだと思うけど。
ーーどうしよう。
慎矢、取りに来るかな…なんて考えてしまってる事に苦笑した。
来るわけない。
きっともう、僕の顔なんて見たくないに決まってる。
でも、慎矢の家に宅急便で送るにも、住所を知らない。
結局、処分する気にもなれなくて、
慎矢の荷物は、そのまま僕の部屋の隅に置いたままになっていた。
今までなら、そこに置いてあることも忘れていたのに、
学校に行かなくなって、1日の大半を部屋で過ごすことになったから、
気にせずにいようと思っていても、自然に視界の片隅に見えてしまう。
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なら、見えない所に片付けてしまえばいいのに、そうしなかったのは…、
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R18 BL小説『 ESCAPE』(190)
R18/BL小説 『ESCAPE』
第5章「陽炎」
190ページ
更新しました。
*****
「……いえいえ、私は旦那様の連絡先は分かりませんよ。
どうしても急用のある時は、出版社の方に連絡するように言われてるだけで。」
少しぎこちなく聞こえる、いつも変わらないタキさんの答え。
だけど、僕はずっと前から、なんとなく引っかかってたんだ。
中学の頃、あの男が警察に捕まって、僕が保護された時、
どうして、タイミングよく父さんが帰ってきて、警察署まで迎えに来てくれたのか。
あの時は、色んなことが一度に起こりすぎて、そんなことを考える余裕もなかったけれど。
他にも、不思議に思うことは、時々あった。
タキさんが、父さんといつでも連絡を取れると言うのは、今の態度ではっきりと分かってしまった。
「大切な話があるんだ。」
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190ページ
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「……いえいえ、私は旦那様の連絡先は分かりませんよ。
どうしても急用のある時は、出版社の方に連絡するように言われてるだけで。」
少しぎこちなく聞こえる、いつも変わらないタキさんの答え。
だけど、僕はずっと前から、なんとなく引っかかってたんだ。
中学の頃、あの男が警察に捕まって、僕が保護された時、
どうして、タイミングよく父さんが帰ってきて、警察署まで迎えに来てくれたのか。
あの時は、色んなことが一度に起こりすぎて、そんなことを考える余裕もなかったけれど。
他にも、不思議に思うことは、時々あった。
タキさんが、父さんといつでも連絡を取れると言うのは、今の態度ではっきりと分かってしまった。
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