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R18 BL小説『 ESCAPE』(248)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第7章「ESCAPE」 
248ページ
更新しました。

*****

「ーーー先生ッ、待っ…」


タクシーの後部座席のドアが開いて、有無を言わせずに大谷を押し込んだ。


大谷の家の住所までは憶えていないが、最寄りの駅名を伝えて、料金を運転手に渡した。



「先生!」



「後で必ず連絡するから。」



それだけ言って、閉めようとしたドアを大谷が止める。



「ーー待っーー、先生、俺、伊織に伝えなきゃいけない事があるんだ。」



「…伝えないといけないこと?」



大谷は頷いて、お願いだと訴えるように俺を見上げてくる。



「最後に伊織に会った時に、伝えたかったのに、最後まで云うことができなかった言葉があるんだ。」



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R18 BL小説『 ESCAPE』(247)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第7章「ESCAPE」 
247ページ
更新しました。

*****

「ーーなんで?あいつ逃げてしまう。」


大谷は焦った声で、そう訴えるけれど、


俺は、井上の姿が、路地の暗がりの中へ消えて行くのを見送りながら、「良いんだ。鈴宮があのビルにいることだけは確かだと分かったから。」と大谷に応えた。


きっと、井上は自分のことよりも、鈴宮のことよりも、速水のことを心配している。


俺が今夜のことを、また学校に知らせたりしないかと危惧しているんだ。


もう電車もないのに、彼はちゃんと家に帰れるだろうかという事だけが心配だった。



「…仕方ない。もう一度あのビルに行って、さっきの男に当たってみよう。」



井上からは確かな情報を、いくつか訊く事が出来た。


部屋は8階。鈴宮と速水以外にも5人いる。


そして…、




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R18 BL小説『 ESCAPE』(246)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第7章「ESCAPE」 
246ページ
更新しました。

*****

「…な、何って…、もう二人とも寝てるよ!伊織は今夜は凌のとこで泊まるつもりで従いてきたんだから。」



しどろもどろとした応えに、大谷は我慢できないとでもいうように、詰め寄っていく。



「ーーーそれは嘘だ!」



「嘘じゃねえよ!」



二人の間に入っていた俺を押し退けて、二人はまた胸ぐらを掴み合う。



「二人とも、落ち着いて!これじゃ話ができないじゃないか。」



二人を引き離しながら、気が付けば、俺も声を張り上げていた。



「絶対違う、伊織は、もう速水さんのところに、自分から行ったりする筈は無い。」



先に井上の服を掴んでいた手を離した大谷は、俯き加減に目線を下げて、呟くように言った言葉は、まるで自分に言い聞かせているように思えた。


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R18 BL小説『 ESCAPE』(245)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第7章「ESCAPE」 
245ページ
更新しました。

*****

二人が曲がった角まで行くと、「ーー放せよっ、」と叫ぶ声が聞こえてくる。



街灯の少ない細い路地を10メートルほど入ったところで、大谷が井上を背後からガッチリと捕まえていた。



「ーー井上くんっ…」



漸く二人に追い付いた俺は、訊きたいことが山ほどあるのに、情けないことに、息が上がってしまって、すぐには喋れない。



「ーーっ、痛いってば、もう逃げないから放せっ」



井上も肩で息をしながら、後ろから羽交い締めにされた腕から逃れようともがいていた。



「…大谷くん、放してあげて。」



息を整えるのも、もどかしく、大谷の腕から離れた井上の両肩を掴んで、こちらを向かせる。





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R18 BL小説『 ESCAPE』(244)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第7章「ESCAPE」 
244ページ
更新しました。

*****

「早く用件を言えよ。」



男は凄みを利かせた声と態度でにじり寄ってくる。



「このビルに、うちの生徒が入って行ったところを見たと言う情報があったので確かめたいんですが。」



「アンタ、先生?どこの学校だよ。」



「桜川学院です。此処に鈴宮伊織と、井上隆司という生徒が来ていませんか?」



「…俺は、知らねえよ。」



俺の質問には、睨みを利かせたながらも、そう応えたけれど、その前に一瞬の間があいた。



「では、速水凌は?ご存知なんじゃないですか?」



「……いねえよ。」



「でも…っ、」



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