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R18 BL小説『 ESCAPE』(144)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第4章「背徳」 
144ページ
更新しました。

*****
暫くしてから、教室の戸が開いて、皆の視線がいっせいに慎矢に集まる。


「遅くなって、すみません。」


「ああ大谷。担任から事情は訊いてるよ。大丈夫か?」


数学の教師は、黒板に問題を書きながら、首だけ慎矢の方に向ける。


「大丈夫です。捻挫しただけでしたから。」


そう言って慎矢は、照れ臭そうに笑っている。


少し足は引き摺っているけど、慎矢は皆から「授業サボれて良かったな。」とか冷やかされて、「うっせ!」と少し顔を赤くしながら、歩いてきた。


自分の席の少し手前で、僕の方に顔を向けて、目が合うと、慎矢はいつものように満面の笑みを僕に向けてきた。



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R18 BL小説『 ESCAPE』(143)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第4章「背徳」 
143ページ
更新しました。

*****

翌日は、2日間降り続いた雨もあがり、青い空と澄んだ空気が心地よい。


こんな爽やかな朝は自分には、まるで似付かわしくない…と思う。


そう、こんな天気が似合うのは…明るくて、太陽のように笑う人。


慎矢だったら、こんな青空の下を、その澄んだ瞳で、まっすぐに前だけを見て、歩くのがきっと似合う。


昨日のことは、不運な事故だったとでも思って、僕のことなんて忘れてしまえばいい。


いつもと変わらない一日が、また始まるだけなんだ。


乗り換えの駅で、担任の藤野先生が僕を待っているのも、いつもと同じ。


学校の最寄り駅で電車を降りて、改札までの混雑の波に、流されるように歩くのも同じ。


駅を出た辺りで、凌達に追いつかれるのも同じ。


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R18 BL小説『 ESCAPE』(142)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第4章「背徳」 
142ページ
更新しました。

*****


呆然と立ち尽くす慎矢の背中を押すと、慎矢は、まるで意思を持たない操り人形のように、足を動かして廊下に出ていく。


階段を下りかけたところで、一旦足を止めて、ゆっくりと肩越しに振り返って、虚ろな目つきで僕を見ていた。



「バイバイ慎矢、外、暗いから気を付けてね。」



そう声をかけると、慎矢の唇が、微かに動いているように見えたけど、僕の耳には慎矢の小さな声は届かない。


そのまま、静かに階段を下りていく慎矢に、僕は手すりから身を乗り出して「慎矢。」ともう一度声をかけた。


階段の途中で、また足を止めて、慎矢は僕を見上げる。



「明日、僕と同じ電車に乗る?」



そう聞いたけど、慎矢は何も言わずに、また階段を下り始めた。



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R18 BL小説『 ESCAPE』(141)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第4章「背徳」 
141ページ
更新しました。

*****

「…伊織、どうした?ごめん、もしかして痛かった?」


目尻から一筋零れた涙に、慎矢は驚いて動きを止める。



「…何でもない。」



「…伊織。」



心配そうに見詰める瞳。僕が何を考えてるなんて分からないのに、こんな時でも優しい慎矢。


でも、もう友達にはなれないね。



「慎矢、もっと強く突いて。痛いくらいに、壊れてもいいから、もっと僕を滅茶苦茶にして。」



そう言って、僕は慎矢の唇を塞ぐ。


舌を絡めて、慎矢の咥内を撫でて、キスの合間に「早く僕を壊して。」と囁いた。


慎矢が律動を再開する。


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R18 BL小説『 ESCAPE』(140)

R18/BL小説 『ESCAPE』

第4章「背徳」 
140ページ
更新しました。

*****

「…ん……っ……」



優しく動く慎矢の指も、


身体の中を弄る、自分の指でさえ、


あの人の愛撫だと思えば、胸の奥に狂おしい程の熱情が込み上げてくる。


僕の望みは、ただあの人に愛されたいだけ。心も身体も全部ひとつになって、溶け合えたらいいのに。


僕は上体を起こして、自分の中から指を引き抜いて、慎矢の猛りを掴み、其処へと誘う。


もう何も考えられなくなっていた。


ただただ、愛して欲しい。


相手が慎矢だということも忘れるくらいに、こんなに気持ちが高揚するのは久しぶりだった。


ゆっくり腰を落として、熱い塊を呑み込んでいくと、慎矢が小さく呻くような声を吐いた。




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